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しおんの王

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両親を惨殺され、失声症になった少女。

彼女が将棋の道に進み、事件の真相にたどり着くサスペンスミステリー。


タイトル しおんの王
著者 かとりまさる
安藤慈朗
レーベル アフタヌーンKC
初版発行 2004年10月22日
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悲劇の舞台で少女は、犯人と将棋を指していた

主人公は、安岡紫音(やすおかしおん)。中学2年生。女流棋士です。

彼女が4歳の時、両親が何者かに殺害されてしまいます。当時、紫音はその現場にいました。目の前で両親を虐殺された紫音は、ショックで事件の正確な記憶を忘れ、声を出せなくなってしまいます。

異常なことに犯人は、血塗られたその現場で紫音と将棋を指します。血の乾かぬその手で、今殺した人間の娘と対局したのです。

「ちょうどいい。今夜見たことは全部忘れろ。生き続けたければ──言葉を忘れるんだ」

犯人が4歳の少女に、そう言い放ちました。

成長した紫音は……

親を失った紫音は、隣に住んでいて、以前から交流のあった安岡家に養子として引き取られます。

8段の腕前を持つ安岡信次の強い影響のもと、自身の持っていた才能を開花させた紫音は、女流棋士への道を歩み始めます。

そして12歳のとき、紫音はついに最年少で女流棋士となるのです。

 

ハリ
ハリ

うぅ……。紫音ちゃん、がんばったんだねぇ……。

 

犯人は、まだ捕まっていません。

あの時、犯人と指したおぼろげな記憶。「相手の指先の雰囲気からして、両親を殺したのは、将棋をやる人間」と、紫音は推測します。

「だからあたしも将棋を? 犯人をみつけるために……」そんな考えが、紫音の脳裏をよぎります。

女流棋士を歩み続けさらに深く将棋にたずさわり続ける紫音は、じょじょにあの時の事件の影を、肌で感じ始めることとなるのです。

将棋+ミステリー

本作は将棋部分だけでなく、ミステリーの要素も強いです。

一体だれが、紫音の両親を殺害したのか。

犯人たりうる人物は次から次へと現れます。名人、その弟、怪しげなスポンサー、記者たち、協会の人などなど。

それは最終巻である8巻で明かされることとなります。誰が犯人なのか。それを推理しながら読むのも、面白いかもしれません。

ただ「読者への挑戦」がある推理小説と違い、途中で完全回答するのは難しいかもしれません。

ミステリーの犯人当て要素と言えば、犯人の名前、犯人である証拠、動機の説明などがありますね。

「この人が犯人じゃないの?」という推測は、読んでいてできると思います。ただ証拠や動機は、8巻途中までいかないと出てきません。終盤も終盤です。

とくに動機に関しては、そんなことで2人も殺したのか、と一般人には理解しにくいことなので、途中で察することは困難です。

なのでもしこの作品を読む機会があったら、あまりミステリー要素にこだわらず、事件の影を乗り越えようと奮闘する紫音の成長ストーリーとして見たほうがすっきりするかもしれませんね(もちろん、ミステリー部分がつまらないわけではないですよ)。

存在感ありすぎの神園九段

ここからほぼ余談です。すいません。

神園修(かみぞのおさむ)という9段のプロが作中に出てきます。アニメCVは、中尾隆聖さん。

男にしては少し長い髪で細身。作務衣を着こなし、いつも酒を飲んでいます。また顔にしわが目立ちます。風体だけみれば、今にも居合刀で人を切り殺しそうな人相です。

この人、出番がたくさんあるわけではないのですが、かなりの存在感をかもし出してくれます。

「本当は男であること」を知った上で、女流棋士として金を稼ぎたい女装少年を弟子にしたり、身体の具合が悪いのに飲酒をやめなかったりと、破天荒な性格をしています。

また3巻百96ページでは、

「勝負ってのはそれだけ厳しいんだぜ」ととんでもない顔芸を披露してくれます(初見時、だれだかわからなかった……)。

しかし彼は変な性格なだけでなく、人情味あふれる人物でもあります。

安岡が紫音を引き取ろとした際、周囲からは猛反対されました。そんな安岡に助言し援助したのは、誰であろう神園なのです。

今の紫音と安岡の幸せな関係があるのは、この人のおかげでもあったのでした。

また物語最終盤では、紫音とのほほえましいやりとりがあります。まるでおじいちゃんと孫のようです。

もししおんの王を読む機会ができたなら、神園の怪演(?)にも要注目かもしれません。

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