【フォーリング・ダウン】死を呼ぶバンジージャンプ。教官はどうやって死んだのか。 & 【学園祭狂騒曲】学園祭荒らし。4つの部屋をめちゃくちゃにしたのは誰か? あまりにも意外な犯人とは?
タイトル | Q.E.D.証明終了(8) |
著者 | 加藤元浩 |
レーベル | 講談社コミックス |
初版発行 | 2000年12月15日 |
あらすじ
フォーリング・ダウン
バンジーができる橋で死んだ男
燈馬と水原はバンジージャンプをやりに遠出。しかし死人が出たため、しばらくバンジーは禁止の状態だった。橋の下で死んだのは、消防学校の教官。学校には今年の春、2人の新人が。速水。そして南部だ。南部には問題なかったが、速水にはある欠点が。それは高所恐怖症。教官は速水に、消防士をあきらめるように言い放つ。しかし速水は首を横に振り、南部は彼をかばって──。
学園祭狂騒曲
文化祭の準備は大変
燈馬たちの高校は、学園祭の準備で大忙し。夜になっても誰も帰らない。防犯上の理由でいくつかのシャッターが下ろされ、燈馬たちのいる1角は、4つの部屋が孤立したような状態に。4つの部屋とは、剣道部の喫茶、落研、軽音部、おばけ屋敷。そんなとき軽音部のアンプがショート、停電が発生。みんなは休憩タイムに。燈馬と水原が学校に戻ると、4つの部屋が荒らされていて──。
Q.E.D.証明終了(8) (講談社コミックス月刊マガジン)
—以下ネタバレ感想—
犯人、トリックについても言及しています。
ぜひ実際読んでから、スクロールしてくださいね。
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フォーリング・ダウン
最後はオレ……消防士になれたかな? もう大丈夫……自分でなんとかする。
こんな高さ、ちっとも怖くない。
犯人は、速水。
実は教官は、墜落死したのは間違いないが、橋の上から突き落とされたわけではなかった。速水はバンジージャンプのゴムを利用して、地上から空中に跳ね上げる罠をしかけていたのだ。
つまり高所恐怖症でも、犯行が可能。速水はこれで教官を殺害したのだ。
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なんとも自分勝手な男の話。
憧れの父と同じ職につきたいという心意気だけはいいですが、高所恐怖症では不可能でしょう。
教官の言葉がすべてを物語っています。「お前のせいで他人が死ぬかもしれんのだぞ。身勝手な理屈をこくな!!」
恐怖症を克服しようとせず、教官を殺すことで解決をはかるなんて論外。
”人を助ける”消防士になる、資格も素質もなかったとしかいいようがない。
燈馬を助けても、なんの贖罪にもならんでしょうな。
友達の父親、教官、友達を失った南部は、かわいそう。
高いところや絶叫系アトラクションがまったく乗れない私からみたら、バンジージャンプとか狂気の沙汰にしかみえない……。
学園祭狂騒曲
なぜ動機のある部に全てアリバイがあるのか? なぜこんなことになってしまったのか?
いったい誰が!? なぜ4つの部屋が荒らされたのか!?
でもみなさん、1つだけ約束して下さい。この答えを聞いたら全員、うらみっこなしですよ。
犯人は、全員。
全員が被害者であり、かつ、どこかの部屋を荒らした犯人だった。
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落語みたいな話。
正直、けっこう好き。このエピソードは、ドラマ化もされましたね。
それぞれが被害者でありながら、どこかを荒らした犯人という意外性。
そしてなによりめずらしく、燈馬の嫉妬のようなものも見れる貴重なエピソードです。
軽音部の男におさわりされる水原を見て、燈馬のドアップが2コマ。論理的な彼の、言葉ではうまく表現できない思考をよく表していると思います。
来てくれてうれしかった、という燈馬の素直な気持ちに対し、照れる水原もいい感じ。
さてメイントリック、というかメインギミックについて。
落研。暗幕を引きはがされていたのに、まっさきに軽音部を疑うのはおかしい。なるほど、たしかに。暗幕を欲しがっていたのは、おばけ屋敷だからね。
落研→お化け屋敷を荒らす動機が生まれた。【落研、お化け屋敷を荒らす】
お化け屋敷。自分たちが学校に戻ってくると、軽音部以外が荒らされていた。犯人は、自分の部屋は荒らさないだろうからね。
お化け屋敷視点だと、軽音部が犯人。【お化け屋敷、軽音部を荒らす】
剣道部。剣道部は荒らされた自分たちの部屋を見て、動機のあるお化け屋敷がやったと思った。その仕返しに、お化け屋敷に向かう。ちょっと~、短絡的すぎんよ。
ところがその時、落研では『世帯念仏』という落語の練習をしていた。その落語ではお経が使われていた。
お経をおばけ屋敷のBGMと勘違いした剣道部は、暗闇の中『落研』の部屋に入り、荒らす。【剣道部、落研を荒らす】
軽音部。軽音部はいさかいのあった落研に向かっていた。しかし暗闇ですっころび、方向が分からなくなる。なんとかたどり着いたそこは、なんと剣道部だった。あの液体、伏線でしたね。
軽音部は落研と思い込んで、実際は剣道部を荒らしてしまったのだ。【軽音部、剣道部を荒らす】
よって、全員が被害者であり、かつ、犯人という状況が生まれたのだった。
すごい状況……。
燈馬が最初に言った通り、うらみっこなしで解決。めでたしめでたし。
自分の心の迷路に気づいた燈馬が、そこを抜けた先の外の世界にも意識を向ける。
そんなお話でございました。
以上、Q.E.D.証明終了。
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