【歪んだ旋律】殺意を奏でる旋律。死体はどこに隠されていたのか? & 【光の残像】現代で暴かれる、30年前の密室殺人。少女の見たものの正体とは?
タイトル | Q.E.D.証明終了(5) |
著者 | 加藤元浩 |
レーベル | 講談社コミックス |
初版発行 | 1999年12月15日 |
あらすじ
歪んだ旋律
倒叙ミステリー
犯人はチェロ奏者、平井玲二(ひらいれいじ)。平井がいるのは崖の近くにぽつんと建つ自宅で、足元には死体が転がっている。平井は窓から、燈馬や水原、クラスメイトの何人かがバスから降りたのを目視。平井はこの後、彼らと会う約束をしていた。しかし約束の時間まで、まだ早い。急いで死体を隠さなくては。平井は自室の、とある場所、に死体を隠して──。
光の残像
昔の写真
10万はするカメラ『ライカⅢc』を、100円で入手した燈馬と水原。中にフィルムが。現像すると、5枚の写真があった。水原の一言で2人はド田舎へ。その村は結核が流行時、かかった者を蔵に隔離し養生させていた。写真の1枚はその蔵を写したもの。現存するその蔵に行く燈馬たち。そこで遺体を発見。死体のポケットから、蔵の唯一のカギが出てきて──。
Q.E.D.証明終了(5) (講談社コミックス月刊マガジン)
—以下ネタバレ感想—
犯人、トリックについても言及しています。
ぜひ実際読んでから、スクロールしてくださいね。
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歪んだ旋律
私が初めてチェロの旋律に触れたのは5歳の時だった。
7歳で初めてチェロを買ってもらった時は……子供用のハーフサイズじゃいやだってダダをこねて大人用のフルサイズのを買ってもらったんだ。
イギリスのチェロ・スクールに入学したのは14歳の時だった。カザルスやロストポービッチの素晴らしい演奏に触れてね。やがて気付いたんだ。
私は偉大な芸術の僕になったんだって……。
死体の隠し場所は、チェストの中。
通常、チェストの引き出しなんかに死体は隠せない。しかし引き出しの1つを逆さまに入れ替えることにより、死体分のスペースを確保したのだった。
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平井はだいぶクソ野郎ですかね。
信頼してくれている女性を犯人としてまつりあげ、犯行が暴かれれば情けない姿で音楽にすがる。
どんなにチェロの才能があっても、これはいただけない。
燈馬が平井の犯行を見破ったからくりは、楽器の性質を利用したものでしたね。
燈馬たちが来る前に、社長に聞かせたというコダーイの”無伴奏チェロソナタ”は変則調弦(スコルダトウーラ)が必要。
燈馬たちに聞かせたバッハの”無伴奏チェロ組曲”は、変則調弦を必要としない音楽。
コダーイの”無伴奏チェロソナタ”を本当に演奏したのであるならば、弦をもとに戻してからじゃないとバッハの”無伴奏チェロ組曲”は演奏できないはずなのだ。
つまり平井は実際には、コダーイの”無伴奏チェロソナタ”をひいていない。燈馬はそれを看破したのだった。
燈馬の知識は幅が広すぎですなぁ。正直私、半分も理解できていません。
燈馬と水原のハウリング子芝居が面白かった。
ちなみに中学時代、成績はそこそこよかったのですが、唯一ものすごい低い点数を取ったのが音楽の筆記テストでした。
まず音楽で筆記試験なんてやるなよ、という話なのですが、なぜかあったんですよね。
お恥ずかしい話ですが私は音符が読めないので、だいぶ点数を落としてしまいました。しかも”空欄が正解”という、意味不明な問題もあった気がします。
光の残像
母さんにひどいことを言った……。ウソつきって……。
だけど僕もウソをつき続けた……。こんなにつらいことだなんて……。母さんの言った通りだ……。
犯人は、次男。
少女の千里眼の力には秘密があった。
それはピンホールカメラ。
蔵には1か所、小さな穴が開いており、そこがレンズと同じように像を結ぶ機能がある。
その穴を通し、蔵の室内の壁に、外の映像が逆さまに映り込んでいたのだ。少女はそれを見て、外の様子を言い当てていたのだった。
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結核の少女、かわいそうですね。
外界の普通の風景を見せつけながら、自身は普通の生活を営むことができない。外に出たい、という涙が悲哀を感じさせます。
かわいそすぎる……。
特効薬を手に入れるために、千里眼能力を悪用するのもやむなしでしょう。
蔵から発見されて白骨死体の正体は、新聞記者でした。
千里眼の力の調査をし続けていた記者を、次男は殺してしまいました。
次男は蔵の外の板を外し、土壁を掘って、そこから死体を壁に埋めたのだ。
結構な力作業ですね。実は外から死体を埋め込んでいたというのは面白い。
燈馬と水原、2人っきりでフリーマーケットに行く仲の良さ。
そして暴漢に襲われた水原を、果敢に助ける燈馬の勇気にはあっぱれ。
以上、Q.E.D.証明終了。
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