【ブレイク・スルー】MIT時代、燈馬の論文が無残に切り裂かれた事件。 & 【褪せた星図】冬山の天文台で見つかった黒焦げの死体の謎。
タイトル | Q.E.D.証明終了(3) |
著者 | 加藤元浩 |
レーベル | 講談社コミックス |
初版発行 | 1999年5月17日 |
あらすじ
ブレイク・スルー
かつての学友、来日
燈馬の学校に不審な外国人が2人やってくる。1人はシド。男性。燈馬がMIT(マサチューセッツ工科大学)にいたときの親友かつライバル。その神童っぷりから、ロキというあだ名を持つ。もう1人はエバ。女性。彼女も、燈馬の友達。2人から水原は、燈馬がMIT時代に遭遇した事件のことを聞く。燈馬が大学研究室に残るための論文を誰かが破り、川に流したらしいが──。
褪せた星図
殺意うずまく天文台
雪山で遭難しかけていた燈馬と水原。1人の少女に助けてもらい天文台へ避難。その中で黒焦げの死体にシートがかけられているのを発見。巨大な望遠鏡の中から出てきたそうだ。そんな死体より夜明かしの準備を、という燈馬の一声により、全員で作業を開始する。そんな折、宮部が首吊り死体として発見されて──。
Q.E.D.証明終了(3) (講談社コミックス月刊マガジン)
—以下ネタバレ感想—
犯人、トリックについても言及しています。
ぜひ実際読んでから、スクロールしてくださいね。
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ブレイク・スルー
2人の天才が一緒にいると、憎しみが生まれる。そして最後は滅ぼし合うことになる……。
神に選ばれたのはどちらなのかを、確かめるために!!
犯人はエバ。
燈馬とロキ。2人の天才が近くにいると、いつか必ず破滅が訪れる。画家のゴッホとゴーギャンのように。
それを危惧したエバは、燈馬の論文を破り川に投げ捨てたのだった。ロキの近くに、燈馬を居させないために。
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エバにとっても苦渋の決断だったでしょう。
エバにとってロキは想い人、燈馬は大切な友人。
当人同士の仲の良さは折り紙付き。その間を、自分の意志で破壊しなければならなかったのだから。
エバの行いは、余計なおせっかいだったのでしょうか。
今となっては誰にもわかりません。
ただ、燈馬に許しをこうエバの涙を見て、彼女が決して邪な思いで燈馬の論文を引き裂いたわけではないことはたしかでしょうね。
とまぁ、難しい話は置いといて。
個人的に好きなシーンは、ロキのいたずらを軽やかにかわした上で、さりげなく水原にクリスマスプレゼントのネックレスを渡す燈馬。
そしてそのネックレスを恥ずかしがらずにちゃんとつける水原。
2人の初々しさ、信頼の様子がうかがえて大変ほほえましいですね。
燈馬君と水原さんの関係、いいよね。
まぁそのネックレスをつけながら言う言葉が、よーかんパーティーをフケようとした男子に対して「紅白を病院でみることになるわよ」と、あいかわらず暴力的ですが。
最終的に完全に和解し、ロキとエバは自国に帰っていきました。
その飛行機の中でロキは、水原に出された問題の答えを導き出します。
飛行機がどんどん高くなり、窓から見える景色が小さくなる。
「そうか、飛行機だぁぁ!!」
褪せた星図
冬は星がキレイだけど……寒くてヤだな……。
ドームを開けっ放しにしてさ……冷たい風がどんどん入り込んで……いやになるよ……。
あ……父さんが呼んでる……。手の届きそうな所に見える……本当にキレイだ……。
そこにさ……いるんだよね……。母さんも……父さんも……。……だったら僕も連れてって……。
ここは寒いんだ……。一緒に連れてってよ!!
犯人は次男の星二。
殺された宮部は、小さい星二に対し嘘を教えていた。「お前の母さんは、父さんに殺されたんだ」と。
天文台をかすめ取ろうとして失敗した宮部の、一種の腹いせだった。子供だった星二は、その嘘を信じてしまった。
宮部さん、悪い人……。
巨大な望遠鏡の中に父さん、つまり福太郎をおびき出すと、太陽光を浴びせ焼死させたのだった。
水原の推理通り、福太郎は光をよけることもできた。しかしこの天文台を作るために払った多大な犠牲のことを思い、その報いとして福太郎は光を浴び続けたのだった。
黒焦げ死体の正体は、福太郎だった。
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なんとも悲しいお話です。
息子は母さんの仇として、自分の父さんを殺してしまう。
「母さんを殺したのは父さん」と嘘を教えられたから。
そりゃ嘘を教え込んだ宮部を殺したくなるのも道理ですね。
もし事実を知っていた長男の星一が、星二の誤解を解くタイミングがあれば、こんな悲劇は起きなかったでしょうね。
福太郎さんは、当然、奥さんを殺したわけではなかったんですよね。
死期を悟った奥さんの最期の願い”シリウスを見ること”を叶えさせたくて、一心に望遠鏡を完成させようとしていたというのが事実でした。
福太郎さんも、頑張ったんだよね……。
宮部殺しのアリバイトリック、気圧。
推理マンガや小説ではお馴染みですね。1時過ぎにドアの音は宮部がドアを開け閉めした音ではなく、気圧を使ったトリックでした。
つまり宮部は1時より前に殺された可能性が出てきた。気圧を使うトリックを行えたのは、窓を開けて空気の流れを変えた人物。そしてドームの動きを計算し、宮部を外につるして置ける人物。
それは、次男の星二しかいませんでしたね。
個人的に好きなシーンは、燈馬が若い女の子と会話しているシーンを目撃した水原が、燈馬の耳を引っ張るところでしょうか。嫉妬かわいい。
前の事件といい、なんか私が注目するところは、事件そっちのけでラブコメシーンな気がしてきました(笑)。
わりとすきなんですよね、ラブコメも。
最期に星二は、凍死という形で人生を終えます。
そして水原は、星二が子供のころに使っていたというトランプを、望遠鏡の前に静かにおいて物語が終わります。
以上、Q.E.D.証明終了。
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