弱小高校女子バレー部の絶対的エース・高橋凛は、卓越したジャンプ力を買われ、県内最強を誇る名門校の冷徹な主将・九条麗華から強引で理不尽な引き抜きを受ける。「そんな泥舟で才能を腐らせるな」と言い放つ九条。揺れ動く凛の心に対し、凛の才能を認める相棒セッターの伊藤菜月は、彼女の将来を想うあまり、あえて冷たく突き放して移籍を促そうとする。すれ違う二人の絆と、手渡された名門校のジャージ。孤独と葛藤の泥沼の中で、凛はかつて菜月と交わした「二人で全国に行く」という大切な約束を思い出す。相棒の不器用すぎる優しさに気づいた凛は、王者の誘惑を突っぱね、再び仲間と共にコートに立つことを決意するのだった。
第1章 コートの外からの視線
まだ夏のしぶとい熱気が残る九月の放課後。
女子バレーボール部の活気に満ちた体育館には、使い古されたバッシュが床を擦るけたたましい摩擦音と、幾度となく跳ね返るボールの鈍い振動音が重苦しく響き渡っていた。
額で綺麗に切り揃えられた前髪を汗で濡らしながら、高橋凛はネット際で大きく踏み込み、空中へと身体を鋭く躍り出させた。
高い打点から振り抜かれた右腕が空気を切り裂き、放たれたスパイクは相手コートのライン際に強烈に突き刺さる。
体育館の天井に届くほどの高い跳ね返りを見せた。
「いいスパイクだよ、凛ちゃん! 今の打点、すごく高くてフォームも綺麗だったね」
ポニーテールを揺らしながら両手首の白いサポーターを直した伊藤菜月が、柔らかい笑顔を浮かべながらボールを拾い上げ、凛のもとへとゆっくり歩み寄ってきた。
凛はぶっきらぼうに前髪を払い落としながらも、相棒である菜月からの賞賛に少しだけ頬を緩める。
床に置かれた使い込まれた黒いスポーツバッグへ視線を落とした。
中学時代から大切に使い込んできたそのバッグには、これまでの泥臭い練習と敗北の記憶がぎっしりと詰まっており、彼女にとっては何物にも代えがたい大切な宝物だった。
「まあね。なっちゃんのトスが完璧だったから打ちやすかっただけだよ。次も同じ高さで頂戴ね」
クールに装って短く返答した凛だったが、実のところ心の中では激しいプレッシャーと戦っていた。
(試合前でもないのに、じんわりと胃が痛み始めてる……)
自分たちのチームは世間一般で言えばどこにでもある弱小校であり、凛の卓越したジャンプ力とスパイクだけが唯一の武器という厳しい現状を、誰よりも凛自身が自覚していたからだ。
「あら、相変わらず仲が良くて結構ですね。でも、その程度の低いトスで満足しているなんて、随分とおめでたいおままごとですこと」
突然、体育館の入口から低く冷ややかな声が響き渡り、練習に励んでいた部員たちの動作が一斉に凍りついた。
そこに立っていたのは、背が高く隙のない綺麗な姿勢を保った少女。
左目元にある小さな泣きぼくろが印象的な、九条麗華だった。
県内最強を誇る名門校のキャプテンである彼女がなぜこの場にいるのか、凛は困惑しながら思わず息を呑んだ。
「九条……先輩? どうして県内トップの強豪校のキャプテンが、うちみたいな弱小の練習を見に来ているんですか」
菜月が少し身体をこわばらせながら尋ねると、九条は抑揚の少ない敬語で、どこか二人を見下すような冷ややかな視線を向けた。
「高橋さん、あなたに話があります。このような環境で才能を腐らせるのは愚かですし、あなたはこの泥舟にいるべき人間ではありません。我が校へ移籍しなさい」
唐突で理不尽な引き抜きの打診。
凛は怒りで目を見張りつつも、県内最強の選手から自分の才能を直接認められたという事実に、微かな高揚感を抱いてしまった。
「な、何を勝手なこと言ってるんですか! 私はこのチームで、なっちゃんたちと一緒に上を目指すって決めてるんです!」
反論する凛の前に歩み寄った九条は、手に持っていた名門校の刺繍が入った眩しいジャージを、拒否する隙を与えずに凛の胸元へ強く押し付けた。
「決定権はあなたにあります。ですが、自分の将来をドブに捨てるような愚かな選択だけはなさらないことですわね」
九条が去った後、静まり返った体育館の中。
凛は押し付けられたジャージを抱え直し、隣に立つ菜月の顔をどうしても直視することができず、気まずい沈黙に胸を痛めていた。
第2章 すれ違う背中と冷たい雨
どんよりとした不気味な灰色に覆われた昼休み。
湿気が溜まった風通しの悪い二階の教室には、不穏でどこか息苦しい空気が淀むように漂っていた。
部室のロッカーを開けるたび、九条から押し付けられた名門校の眩しいジャージが目に入り、高橋凛はまるで罪悪感の塊を隠しているかのような重苦しい錯覚に囚われていた。
ポケットの中で短い周期の振動を繰り返すスマートフォンには、九条からの執拗な移籍の打診メッセージが届いている。
その画面を見るたびに凛の胃の奥は激しく痛み苦しんでいた。
「……はぁ、どうして私ばっかりこんな目に遭わなきゃいけないのかな」
溜息を吐きながら凛が購買に向かうと、途中の廊下で好物のカレーパンを買い込んでいる生徒たちの賑やかな声が耳に飛び込んできた。
普段なら真っ先に並んで買い求めるはずの惣菜パンだが、今の凛には喉を通る気が到底しない。
ただ重い足取りで校舎の最上階へと向かって階段を登っていった。
きしみ混じりの音を立てる重い扉を押し開けると、誰もいない屋上の広場には湿った生ぬるい風が吹き抜けている。
フェンスの脇にはポニーテールを揺らす伊藤菜月の姿があった。
「なっちゃん、ここにいたんだ。探したよ」
声をかけた凛に対し、菜月は振り向く動作をわずかに遅らせた。
両手首の白いサポーターを無意識に強く締め直しながら、どこか遠くを見つめるように視線を泳がせる。
「凛ちゃん……。九条先輩からの引き抜きのお話、まだ断っていないんでしょう?」
菜月の問いかけは優しく穏やかだったが、その声のトーンには明確な壁が作られていた。
凛の心臓はドクンと嫌な拍動を打った。
「断るつもりだよ! だけど、あの人の勢いがすごくて、返事をするタイミングを逃しちゃって……。私はなっちゃんと一緒に全国に行きたいんだよ」
言い訳するように必死で言葉を重ねる凛だったが、菜月は視線を地面に落としたまま、ぽつりと冷たい一言を零した。
「私ね、インフルエンザにかかったみたいに急に冷静になっちゃったんだ。凛ちゃんは強豪校に行くべきだよ。うちのチームにいても、あなたの才能は絶対に潰れちゃうから」
突き放すような相棒の言葉に、凛は言葉を失い、喉の奥がカラカラに乾いていくのを感じた。
冬場に猛威を振るう感染症の例えまで持ち出して自分を排除しようとする菜月の本心が見えない。
裏切られたような激しい絶望感が胸を締め付けた。
「なっちゃん、本気で言ってるの? 私たちの約束は嘘だったの?」
「本気だよ。今のあなたとは、もうトスを合わせられない」
菜月はそれだけ言い残すと、一度も凛と目を合わせることなく、背中を向けたまま屋上を去っていった。
一人取り残された凛の足元には、暗い空からポツリと冷たい雨粒が落ちる。
彼女の深い孤立感をあざ笑うかのように、コンクリートの床に黒いシミを作っていった。
第3章 冷えたコーヒーと震える指先
強烈な勢いで地面を叩きつける夕方の雨は激しさを増し、肌寒い秋の風が路上の水たまりを不気味に揺らしていた。
菜月から受けたショックで人生で初めて部活をサボってしまった高橋凛は、黒いスポーツバッグを抱えながら、バス停の小さな屋根の下で所在なさげに雨宿りをしていた。
びしょ濡れになった前髪から水滴が滴り落ちるのを払いもせず、ぼんやりと街灯の光を見つめていると、不意に目の前に黒い高級傘が差し出された。
「こんな場所で濡れているなんて、エースとしての体調管理が甘いのではありませんか、高橋さん」
視線を上げると、そこには姿勢を崩さずたたずむ九条麗華の姿があった。
左目元の泣きぼくろが街灯の明かりに怪しく浮き上がっている。
九条は拒絶する間も与えずに凛の腕を掴むと、近くの落ち着いた喫茶店へと強引に連れ込んだ。
店内に飾られた和風の文様や温かい照明を目にして、これぞまさに日本人の安心だと無意識に安らぎを覚えかけた凛。
だが、テーブルに置かれた黒い書類を見て一瞬で現実に引き戻された。
「これが我が校への移籍同意書です。ここに署名すれば、あなたには最高の環境と勝利を約束します」
九条が注文した冷めたブラックコーヒーの湯気が消えていくのを眺めながら、凛はカップを持つ手が小さく震えるのを隠せなかった。
九条の語る圧倒的な練習環境や全国制覇という魅力的な言葉は、バレーボールを愛する者として抗いがたい輝きを放っていた。
しかし、目を閉じれば脳裏に浮かぶのは、体育館のコートで菜月たちとバカみたいに笑い合いながら、泥臭くボールを追いかけた愛おしい日々だった。
「私は……なっちゃんたちとバレーがしたいんです。勝ちたいのは事実ですけど、誰と勝つかが大事なんです」
凛は声を振り絞って反論したが、九条は一切の感情を交えずに冷徹な瞳で凛を見つめ返し、淡々と現実を突きつけてきた。
「仲間ごっこで満足するならそれも結構。ですが、あの伊藤というセッターはすでにあなたを捨てていますよ。彼女はあなたの才能に恐怖し、自分から身を引いたのです」
九条の言葉はナイフのように凛の胸を深く刺した。
菜月の「トスは合わせられない」という拒絶の言葉が再び脳裏で渦巻く。
手渡された黒いボールペンのズシリとした重みが指先に伝わり、凛の心は勝利への渇望と相棒への執着の間で激しく引き裂かれていった。
「さあ、サインをしなさい。あなたの本当の居場所は、ここではなく我が校のコートです」
九条の催促に押されるように、凛は震える手でペンのキャップを外し、紙面の署名欄へとゆっくり握り直したペン先を近づけていった。
黒いインクが用紙に触れるか触れないかという極限の緊張感の中、凛の指先は葛藤の限界を迎えてピタリと止まった。
第4章 雨上がりの解と約束の再開
前夜の雨が嘘のように上がり、澄み切った秋の空気が爽やかにグラウンドを包み込む早朝。
高橋凛は硬い決意を抱いて体育館へと足を進めていた。
迷いを振り払うように重い両開きの扉を押し開けると、朝の静寂が満ちる館内には、一筋の光と共にボールが跳ね返る規則的な音が響いていた。
コートの真ん中では、誰よりも早く来て黙々とトスの自主練を繰り返す伊藤菜月の姿がある。
凛はその光景を目にした瞬間に息を呑んだ。
「なっちゃん……こんな朝早くから、一人で練習していたの?」
呼びかける凛の声に菜月は肩を跳ねさせ、手にしていたボールを床へこぼしながら、両手首の白いサポーターをぎゅっと強く握り締めた。
菜月の視線は泳ぎ、いつもなら崩れないポニーテールが微かに揺れる。
その目元が少し赤く腫れているのを凛は見逃さなかった。
「凛ちゃん、どうしてこんな時間に……。九条先輩のところへ移籍するんじゃなかったの?」
「行くわけないでしょ! 私がバレーをやっているのは、なっちゃんのトスを打ちたいからなんだよ!」
凛は叫ぶように言葉を返すと、使い込まれた黒いスポーツバッグを床に投げ出し、菜月の元へと一気に駆け寄った。
菜月は驚きで目を丸くし、唇を震わせながら必死に視線を逸らそうとしたが、凛はその両手首をしっかりと掴んで離さなかった。
凛の視線は、二人が一年生の時に揃って購入した色違いのリストバンドへ注がれ、決して解けることのない強い絆を思い出させていた。
「嘘ついてたでしょ、なっちゃん。私の将来を心配して、わざと意悪なこと言って私を追い出そうとしたんでしょ!」
凛に本破りな真実を叩きつけられ、菜月の目から大粒の涙がポロポロと溢れ出した。
彼女の完璧主義という仮面が見事に崩れ去った瞬間だった。
菜月は自分の弱さを認めるように俯き、小さく肩を震わせながら、抑えていた本音を途切れ途切れに吐き出した。
「だって……凛ちゃんの才能は本物だから。私みたいな下手のトスに付き合わせて、あなたの夢を邪魔したくなかったんだよぉ……」
相棒のあまりにも不器用で温かい優しさに触れ、凛の胸は猛烈な愛おしさと申し訳なさで一杯になり、溢れ出る涙を止めることができなくなった。
凛は菜月の華奢な身体を力一杯に抱きしめ、体育館の天井に響くほどの声で自分のワガママを叫び散らした。
「バカ! なっちゃんのバカ! 私は九条さんの完璧なトスなんていらない! 私はなっちゃんのトスじゃなきゃ絶対に打てないの!」
「凛ちゃん……ごめんね。ごめんね……っ! 一緒に全国行こう、二人で絶対に行こうね!」
抱き合いながら大泣きする二人の頭上には、大きな窓から温かい朝の光が差し込み、二人が再び結ばれた瞬間を優しく祝福していた。
お互いの涙を拭い合い、最高の笑顔を交わした二人。
色違いのリストバンドを掲げながら、秋の大会で強豪校を倒すことを固く誓い合った。
第5章 コートの熱気と限界突破の跳躍
秋の県大会当日の会場は、全国を目指す各校の熱気と観客の歓声が渦巻く巨大な体育館であり、空気全体が心地よい緊張感で張り詰めていた。
メインコートのネットを挟み、高橋凛たちの弱小チームと、九条麗華が率いる県内最強の王者・名門バレー部がついに正面から対峙していた。
主審の甲高いホイッスルが会場に響き渡ると同時に、両校のプライドを懸けた怒涛のラリーが幕を開け、固い床には激しいバッシュの摩擦音が響いた。
「高橋さん、あなたの選択がどれほど浅はかだったか、このコートの上で証明して差し上げますわ」
ネット越しに冷徹な視線を向ける九条に対し、凛は前髪を揺らしながら強く視線を返し、言葉ではなく鋭いスパイクで返答を試みた。
しかし、王者たる強豪校の壁は極めて厚い。
九条の完璧なリードブロックと高さによって、凛の得意なスパイクは幾度となく跳ね返された。
得点差が徐々に広がり、コート内に焦燥感が漂い始める。
凛は一人で背負い込もうとして無意識に喉を鳴らし、プレッシャーから胃の痛みを覚えかけた。
「凛ちゃん、大丈夫だよ! 一人で戦ってるんじゃないんだから、私を信じて思い切り跳んで!」
背後から届いた伊藤菜月の力強い声に凛が振り返る。
そこには両手首のサポーターを固く締め直し、凛へ絶大な信頼を寄せる相棒の笑顔があった。
菜月の温かい言葉が胸に染み渡ると同時に、凛の全身から余計な力が抜け落ち、まるで視界が急速にクリアになっていくような感覚を覚えた。
凛と菜月は視線を交わす。
一年生の夏に敗北した夜に交わした言葉――あの日のアイスという合言葉を暗黙のうちに共有し、初心の熱い情熱を取り戻した。
「うん、分かってる! なっちゃんのトスなら、どんな高い壁だって絶対に打ち抜いてみせるよ!」
試合は怒涛の追い上げを見せ、一進一退の激闘の末に最終セットのマッチポイントという極限の局面にまで持ち込まれた。
ラリーが長く続く中、相手の厳しいコースからのアタックを必死のレシーブで繋ぎ、ボールは綺麗な弧を描いてセッターの菜月へと上がった。
菜月は頭上に上がるボールに集中し、全神経を指先に研ぎ澄ませながら、凛が最も打ちやすい最高の打点へと魂の込もったトスを打ち上げた。
「跳べ、凛ちゃん! 私たちのバレーを見せてあげて!」
「あぁぁぁっ――!」
菜月の叫びに応えるように、凛は助走をつけて床を激しく蹴り出し、己の限界を遥かに超える高さへと身体を空間に解き放った。
眼前には九条の手が立ちはだかる完璧な3本ブロックが展開されている。
だが凛の瞳には隙間がはっきりと見えており、腕を振り抜く直前でまるで世界中の時が止まったかのような静寂が訪れた。
第6章 夕空に誓う不敵な笑み
空中で時が止まったような静寂の中、高橋凛は全身の筋力を右腕に収束させた。
九条麗華が差し出す高いブロックの手先をかすめる軌道で、渾身のスパイクを振り抜く。
打ち抜かれたボールは、強豪校のコートの真ん中に鋭く突き刺さり、審判の笛の音と共に歓喜の大歓声が体育館全体を大きく揺らした。
奇跡的な逆転勝利が決まった瞬間、凛は着地と同時に菜月のもとへと駆け寄った。
二人は抱き合いながら勝利の涙を流して喜びを分かち合った。
激闘が幕を閉じ、すっかり静けさを取り戻した夕暮れ時。
オレンジ色の美しい西日が差し込む体育館の裏口には、爽やかな秋の風が吹いていた。
大会の後片付けを終えた凛は、使い込まれた黒いスポーツバッグを肩にかけ、ファスナーに付けた小さなお守りが夕日に照らされて綺麗に光るのを眺めていた。
「見事なスパイクでしたね、高橋さん。私のブロックの上から打ち抜かれるなんて、夢にも思いませんでしたわ」
裏口の壁に背をもたせかけて待っていた九条麗華が、抑えたトーンで声をかけてくる。
凛は足を止めてまっすぐにその瞳を見つめ返した。
九条の目元にある泣きぼくろは夕日を受けて影を作り、いつも通りの気丈な姿勢を保ちつつも、その表情には悔しさと一目置いた敬意が滲み出ていた。
「九条さん……。私、あの時に強豪校へ行く選択をしなくて本当によかったです。なっちゃんとだから、今日こうやって勝てたんだと思います」
凛がぶっきらぼうながらも揺るぎない自信を込めて言い切ると、九条はフッと眉を和らげ、どこか満足そうに息を吐き出した。
「ふん、今回はあなたの意地勝ちということにして差し上げます。ですが、次はこうはいきませんわ。覚えておきなさい、次は絶対に潰しますから」
「望むところです! 何回かかってきたって、私となっちゃんで返り討ちにしてあげますよ!」
背を向けて去っていく九条の凛とした後ろ姿を見送りながら、凛の心には敵に対する深い敬意と、自分たちの絆に対する絶対的な誇りが満ち溢れていた。
「凛ちゃん、待たせてごめんね! さあ、みんなで帰って勝利のお祝いしよ!」
後ろからポニーテールを揺らしながら走ってきた菜月が、凛の隣に並んで明るく微笑みかけると、凛も自然と笑みがこぼれた。
二人は固く手をつなぎ、秋の心地よい風を感じながら、夕陽に向かって広がる帰り道を一歩一歩踏み出していった。
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