【虚夢】殺害された映画プロデューサー。いったいどこで殺されたのか。 & 【十七】かつて日本に存在した独自の算術、”和算”。少女が未来に託した思い。
タイトル | Q.E.D.証明終了(38) |
著者 | 加藤元浩 |
レーベル | 講談社コミックス |
初版発行 | 2011年2月17日 |
あらすじ
虚夢
映画製作は金がかかる
映画プロデューサーの久瀬が、自宅で新作始動パーティをやるという。ひょんなことからそれに参加することになった燈馬たち。久瀬と脚本家の円野は学生時代からの付き合い。彼らの映画作りに、大富豪島本家の三男、繁彦はずっと出資し続けていた。しかし映画の興行収入はいまいち。銀行からも睨まれて、今度こけたらアトがない状態だった。そんななかで、殺人事件が発生し──。
十七
鎖国中の日本で発展した算術
ドラマのロケ地になり、話題となった片隅神社。ドラマの資料館を作る計画が持ち上がったが、建設予定地には古ぼけたお堂が建てられていた。ご神体もない、壁が黒く塗られた17角形の不気味なお堂。中にあるのは謎の額だけ。「これは算額じゃないかな」燈馬はそう言う。かつて日本で隆盛を誇った独自の算術、”和算”。江戸時代、和算家をうならせた1人の少女がいて──。
Q.E.D.証明終了(38) (講談社コミックス月刊マガジン)
—以下ネタバレ感想—
犯人、トリックについても言及しています。
ぜひ実際読んでから、スクロールしてくださいね。
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虚夢
実際に起きた殺人事件の真相が明かされる!
大ヒット間違いなし! みんな喜んで出資してくれるに決まって……。
犯人は円野。
動機は、久瀬を今殺さなければ、自分の作品が2度と映画にできなくなる危険があったから。
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自分の未来のため、長年連れ添ったプロデューサーを殺した男のお話でした。
犯人が隠れていたのは、映画の映された窓の後ろ。
強い光が当てられた窓は鏡のようになり、外の様子が見えなくなるのだ。
なかなか綱渡りなトリック。っていうか犯人、心臓バクバクものでしょうな。1歩間違えば、死体とともに発見されて言い訳できませんよこれは。
とはいえアリバイを作り、かつ、隠れ場所をも作れるというのはかなりよくできているかもしれない。

ハリがやったら、物音立てて見つかりそう……。
円野の脚本、実際のところはどうだったんですかねぇ。
燈馬の言う通り、何年もヒット作品が出ないのは脚本にも問題があるのではないか、と思われても仕方ないかな。
本当にシナリオが面白ければ話題になって、ヒットすることもありますからねぇ。昨今では『カメラを止めるな!』という映画がそんな感じでしたね。
「くだらん……そんな映画、オレなら1円も出さねェよ」
今まで大金を出資し続けた島本にすらあきれられた円野の提案。ひもじい状態でも映画を借りようとする島本が言うと、さらに言葉に重みを感じますな。
バドミントンで危うく人を殺しかけた水原。いつか犯人にならないかどうか心配です。
十七
このお堂に込めた謎を、いつか解いてくれる人が現れる……。
時を超えて……。
お堂に込められた謎は、虚数。
和算には虚数という概念が存在しなかった。しかし少女──秋沙(あいさ)は、虚数の存在を確信していたのだ。
その謎をお堂に込めて、いつか誰かが謎を解いてくれることを願ったのだ。
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自分の力では解決できない問題。それを未来に託した1人の少女のお話でした。
この話、数あるQ.E.D.のストーリーの中でも、五指に入るくらい好きなんですよね。
江戸時代、日本で発達した和算には、虚数という概念がなかった。ゆえに秋沙には絶対に解けない疑問があった。
秋沙が未来に託した問題を、時を超えて、主人公である燈馬が完璧に読み解くというのが、静かながら壮大な物語を感じさせます。
大量に死者が出るわけでもない、ショッキングなシーンがあるわけでもない。でもこれほど印象に残る話が紡げるのが、Q.E.D.という作品の魅力なのかもしれません。
秋沙が和算家建部の元を訪れたとき、最初に出された問題を即答します。
やべぇ、私にはこの時点ですでに解けないだが?
秋沙は建部に習い、めきめきと実力を付けていきます。そしてたどり着いた疑問。
「天元術で解を得ると解が2つになるときがある」
そういう問題は出来が悪い、と建部は言うも、秋沙は納得せず。
独自の理論で建部を説得しようとするも、彼はこれを病題だと断定。
ここで終わっていたら、私の建部先生に対する評価はだだ下がりでしたね(笑)。
落ち込む秋沙に、建部はこう言います。
「でもお前が正しい気がする。だからこれは遺題としよう」
秋沙の願いを聞き入れ、建部は17角形のお堂を建立。未来に問題を託したのだった。
少女の疑問を聞き流さず、自分がわからなくてもそれを認め、お堂まで立ててくれる建部先生、マジイケメン。
今回の水原は、いつになく大人しかったですね。巫女服が大変似合っていました。
バイトで御神楽を踊ることを楽しみにしている水原ですが……。
学校のイベントごととか面倒だなぁと思っていた私からしたら、水原の気持ちはよくわからん。
バイトしてまでやるとか、まじで尊敬できるレベルですわ。
最高の和算家として、関孝和という方があげられていました。
日本で独自に発展した和算。
残念ながら洋式の算術におされ廃れてしまいましたが、せめてその存在だけでも知っておくといいかもしれませんね。
以上、Q.E.D.証明終了。
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