【殺人講義】FBIの犯罪プロファイリング。被害者はなぜ、自分の部屋で殺されたのか。 & 【アニマ】アニメ制作スタジオで起きた悲劇。原画が濡れた意外な理由とは。
タイトル | Q.E.D.証明終了(37) |
著者 | 加藤元浩 |
レーベル | 講談社コミックス |
初版発行 | 2010年10月15日 |
あらすじ
殺人講義
プロファイリングは確率論
水原警部の部下、笹塚はFBIのプロファイリング講義に参加することに。彼の誘いで燈馬や水原も同席。場所は台風のせまる伊豆半島。ほかの参加者は警務部の瀬戸、有田。刑事部の信楽。検察庁の伊万里。FBI行動分析課のマイセンの指導の元、彼らはプロファイリング論を習う。難解な講義に辟易する一行。しかも、参加者の間でなにやら不穏な空気がただよい──。
アニマ
アニメの制作は大変
落ちていた原画をアニメスタジオに届けた水原。死ぬほど感謝された彼女はスタジオ内を案内され、アニメ製作がいかに大変かを制作進行の蛯沢に教えられる。ただでさえ大変なアニメ制作だが、スタジオではさらにトラブルが。大事なスタッフの雪宮が会社を辞めてしまったらしい。辞めた原因を知らなかった蛯沢だったが、製作進行室の天井にシミがあるのを発見して──。
Q.E.D.証明終了(37) (講談社コミックス月刊マガジン)
—以下ネタバレ感想—
犯人、トリックについても言及しています。
ぜひ実際読んでから、スクロールしてくださいね。
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殺人講義
「1度しか賭けない」「大穴に賭ける」
けど失敗して当たり前か! 大穴なんてほとんど外れるんだからな!!
犯人は、信楽。
警察内部の窃盗犯は彼であり、瀬戸はそれを突き止めていた。
自首を勧めた瀬戸を殺害した信楽は、その罪を有田に擦り付け殺そうとしたのだった。
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犯罪が明るみに出そうだったので、一世一代の大博打に出て失敗した男のお話でした。
プロファイリングが焦点にあてられたストーリーでしたね。
実際当たるものなんですかね。
ネットで転がっている有名なプロファイリングネタが鮮烈すぎて、本当のところどれほど効果があるのかわからない(笑)。
誕生日問題も出てきました。
正解は23人。
こういうの面白いですよね。
大数の法則も話題にあがりました。
こういうウンチクがいっぱいでてくるから、Q.E.D.は面白い。
勉強になるね! 難しすぎるのはまったく覚えられないけど……。
火サスの聖地、崖での犯人あばきでしたが、やたら犯人である信楽(しがらき)が格好良く書かれてませんでしたか(笑)。
嵐の中。第1ボタンを外したワイシャツを着て、不敵な笑みを浮かべながら登場する信楽。目元が暗くなっていて、なんだか大物みたいな風格です。
燈馬に犯人だと名指しされても、「フン! たいしたもんだ。よくそこまでわかったな」と無様にあがくことをしない。
大切なラストのコマも信楽が独占。いつもは静かに終わることが多いQ.E.D.ですが、今回は彼の咆哮で幕を引きます。
「1度しか賭けない」「大穴に賭ける」
FBI分析課マイセンが言った、賭けに勝つ秘訣を皮肉的に引用し、両手を広げ叫ぶ信楽。何かとインパクトのある犯人でした。
メイントリックは、部屋のすり替え。
101号室と103号室をまるまる入れ替え、被害者瀬戸の殺害現場を誤認させるトリックでした。部屋を交換するトリックは、推理マンガでもたびたび登場する手法ですね(金田一少年の仏蘭西銀貨殺人事件とか)。
管理人がいたら1発でバレかねないトリックですが、豪雨のため来られなかったためセーフ。
それは信楽の計算のうちだったのでしょうからいいのですが、ドアのプレートってあんな簡単に剥がれるものなんですかね。
ぺりっと簡易に取ってますが……。缶に貼られたシールを剥がすより簡単そうですよ。
接着剤でくっついていたとしたら、結構な指の力が必要そうです。まぁ瀬戸を殺した手際を見る限り、信楽はかなりの身体的能力を持っているのかもしれませんが(笑)。
アニマ
でも、もう……疲れちゃったの。
犯人は、蛯沢(意図してやったわけじゃないけど)。
ここのアニメスタジオは、マンションの壁をぶち抜いたものを利用している。2階は単身者用の部屋になっていた。
本来なら洗濯機用の蛇口があるのだが、アニメスタジオでは使わない。そこを物置として利用していた。
TV局制作部の木常が蛯沢を押したとき、彼の体が物置に衝突。その衝撃でハリガネで固定していた蛇口が動き、水が漏れ出してしまったのだ。
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アニメ制作にかける情熱を失ってしまった女性のお話でした。
アニメの制作って地獄の進行らしいですね。
動画の書き手は休みなしで1日10時間以上働いて、月収が8万円に届かないと作中で説明されていました。普通それだけ仕事すれば、バイトだろうが十分すぎるほどのお金が手に入るでしょうに。
アニメ制作がブラックすぎるという状況は、何もここ2~3年のことではなく昔から言われています。改善の兆しはあるんですかね。
木常のような人間がはびこるようでは、アニメ業界の行く末は暗いような気がします。
本当、情熱だけで支えられている業界なんだなぁ、という感じですなぁ。
「原画の1枚1枚にどれだけみんなの苦労が詰まっているか!! それを台無しにするなんて!!」
言ってることはもっともだが君もそれ道に落としたやん、とツッコんだのは私だけではないはず。
本当に疲れてたんだろうね。白目向いて車の中で寝るくらいだし。
原稿が濡れてしまい、その後始末をしなくてはならないことを思ったとき、雪宮の心は折れてしまいました。それこそ、自分が犯人になろうとするくらいに。
「でも、もう……疲れちゃったの」
アニメは好きだけど作る情熱はもう失ってしまった。涙を流す雪宮に、胸が苦しい思いになります。
余韻という意味では、それから、厳しいアニメ作りの労働環境を印象付ける意味でも、雪宮にはこのままアニメ業界を去ってもらったほうがいいのかもしれません。
しかし個人的にはいつかまた、彼女にはアニメの世界に戻ってきてほしいなぁ、と勝手ながら願ってなりません。
これはマンガの中の出来事とはいえ現実でも、経済的な理由で、または過酷な労働環境で続けられなくなる人はいっぱいいるのでしょう。
アニメーションの由来は、ラテン語で霊魂を意味する”アニマ”からきているそうです。
1人でも多く、そして長く、安定して、アニマを吹き込む仕事を続けられる環境を作ってほしいものですね。
以上、Q.E.D.証明終了。
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