【災厄の男の災厄】お騒がせ男アラン、再び。400万$はどこへ行ったのか? & 【いぬほおずき】映画撮影中に起きた惨劇。男はなぜ、殺されなくてはならなかったのか。
タイトル | Q.E.D.証明終了(17) |
著者 | 加藤元浩 |
レーベル | 講談社コミックス |
初版発行 | 2004年2月17日 |
あらすじ
災厄の男の災厄
迷惑な男アラン、再登場
13巻で登場した、はた迷惑な男アランがまた現れた。いい人材がほしい、とわめく彼は一計を案じる。共犯になれと言われたエリーは、提案を拒絶。アランの誕生日会の招待状が、燈馬の元へ。燈馬は行きたくない、と固辞するも水原の手で連行され南の島へ。食事会後、コテージにそれぞれ散るパーティー参加者。燈馬のコテージにエリーがやって来て、彼の企みが暴露されるが──。
いぬほおずき
映画の撮影中に死人が……
自宅近くで映画の撮影があるという。燈馬と水原は見学に。女優黒川、男優南郷というメンツに加え、黒川の娘ナツキが銀幕デビューを飾る作品だった。ナツキが車から降り現場に現れたときは、全員の視線が彼女に向くほどの美貌だった。ところが映画の撮影中、事故が発生し南郷が死んでしまう。黒川が撮影中に南郷を誤って刺殺したのだ。小道具の刀は机の上に雑に置かれていて──。
Q.E.D.証明終了(17) (講談社コミックス月刊マガジン)
—以下ネタバレ感想—
犯人、トリックについても言及しています。
ぜひ実際読んでから、スクロールしてくださいね。
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災厄の男の災厄
「こういう孤島での限られた人数でのゲームの場合、犯人が共犯というのはルール違反じゃないんですか? どんな状況でもアリバイが成立してゲームのヒントにならなくなる」
「確かにその通りだが、今回は違う! なぜなら最初にオレとエリーは共犯だって宣言してあるじゃないか!」
犯人は、アランとエリー。
2人の共犯であるため、お互いのアリバイ証言は無効。
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最初に共犯を拒否していたエリーが、実は協力していましたというお話。
一度は協力を否定していたエリーが犯人の一味でしたというのは、個人的には面白いと思うけど、読む人によってはずるいと感じるかもしれませんね。
400万$の消失トリックは、ドミノ倒しのようなものでした。
まずエリーは隙を見て、燈馬とロキの200万$を奪取。それをエリオットのコテージに運ぶ。
自分の分も含め、エリオットのコテージには合計300万ドルが。それを見たエリオットは、これは契約金の積み増しかな、と勘違い。
その晩、燈馬とロキの金が盗まれたことを聞いたエリオットは驚愕。このままでは犯人にされかねない、と300万$をリュウのコテージに放り込む。

マコちゃんなら全部もらっていきそう……。
リュウが自分のコテージに合計400万$があるのを確認したときは、みんなでエリオットのコテージを捜索中だった。このままではリュウは窃盗犯になってしまう。リュウが運べる安全な場所は、アランの屋敷しかなかった。
こうしてアランはお金をすべて回収。ただし、すべてを見破っていた燈馬によって、400万$は隠されていたのであった。
ピタゴラスイッチみたいな、お金消失トリックでした。トリックそのものより、400万$という大金を簡単に持ち運ぶアランの感覚のほうに驚愕ですかね。
燈馬が隠したからお金が発見できなかったわけですが、あんなにブチギレるくらいなら最初からやらなきゃいいのに……。
すごい豪華なディナーが並んでいましたが、エリーの腕良すぎですなぁ。美人でアランのわがままにも付き合ってあげる、万能秘書。うらやましいかぎりで。
水原が登場する最初の絵、なんか好き。
いぬほおずき
私は彼の本性を知り恐ろしくなった。彼といれば自分を失う……。
だから別れた。その南郷が娘のナツキに近づいてきた。
彼の愛情に偽りはなく再現もない。娘を守る方法はただ1つ……。
他の道はない……。おわかり? 坊や。
犯人は、女優黒川。
衆人環視の中、どうやって彼女は小刀を本物と入れ替えたのか。
それは、娘が現場に現れたその瞬間。
全員の視線が、自分の娘に集中したそのときに、黒川は偽物の刀と本物の刀をすり替えたのだった。
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1話目はわりとライトなお話でしたが、2話目のこちらはちょっと難しいお話でした。
トリックが難しいというより、登場人物の心情がつかみにくいという点においてなかなか難解な気がする。
黒川が南郷を殺した理由。
黒川は南郷と昔付き合っていた。
南郷は誰でも際限なく愛すことができる人物だった。南郷は黒川を本気で愛していたが、それは彼女に限った話ではなかった。南郷は好きだと思ったものは本気でいくらでも好きになれる人物だったのだ。
黒川は彼を、凶暴なまでの愛情の持ち主、と表現しました。
南郷といると自分を失う、そう危惧した黒川は彼と別れました。その彼が今度は、自分の娘に手をだそうとしている。
娘を守るため、黒川は彼を殺したそうです。

ちょっと難しいね……。
わかるようなわからないような……。
どうせ南郷はナツキの実の父だろ、となげやりに思っていたのですがそんなことはなく。
女の性で、娘にかつての恋人を取られたくなかった、というわけでもなく。
娘を守るため、というのは私にはよくわからん、というのが正直なところかもしれません。
自分の彼氏が何人の女性も同時に愛せる人で、そんな人と娘を近づかせたくなかった、と考えていいのであれば、まぁ理解できなくもないか。
ん~、でもなんかやっぱりしっくりこないなぁ。
上には書いてませんがこの事件、本当はもう1人殺されている連続殺人なんですよね。
まるでおまけのごとく殺された美術部の柳沢。ある意味Q.E.D.作品の中でも上位に入るかわいそうな人かもしれません。
じゃっかん変態というべき人間でしたが、無残に殺されたあげく犯人として祭り上げられるほどでしょうか。見た目オタクに人権はないのか。
周波数を使った死亡時刻偽装トリックや、べニヤ板の密室トリックは、こんなついでの殺人で使うにはもったいないんじゃないか、と思わなくもない(笑)。
タイトルの『いぬほおずき』。
別名バカナスと呼ばれ、役立たずと言われる秋の花。花言葉は、うそつき。
はたしていぬほおずきの名前にふさわしい人物は、誰だったんでしょうね。
そういえば珍しく、燈馬の怒鳴り声が見られましたね。
こんなことになるとは思わなかった、と言い訳する監督に、
「逃げるな!」と、一喝。「あなたの全てを失くしてでも、裁判では彼女の情状酌量を乞うてください!」と声を荒げました。
こんな危険な舞台を用意した監督には、もっと言ってやっていいと思う。
以上、Q.E.D.証明終了。
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