【サクラサクラ】大切な会社資料が行方不明に。 & 【死者の涙】燈馬がおこなった危険な賭け。
タイトル | Q.E.D.証明終了(16) |
著者 | 加藤元浩 |
レーベル | 講談社コミックス |
初版発行 | 2003年9月17日 |
あらすじ
サクラサクラ
コピーしている間に消えた資料
富永は結婚をひかえた会社員。花見の場所取りをしていた水原は、同じく場所取りにきた彼女と世間話をすることに。どうやら彼女は、仕事で失敗してしまったらしい。コピーを取り、大事な原版の書類をまとめようとしたとき、5枚あったはずの原版が4枚しかなかったのだ。社員総出で探すも見つからず。コピーしている最中にあった出来事といえば、用紙が途中できれたことで──。
死者の涙
消えた女性の謎
水原警部の休暇で、田舎にやってきた燈馬と水原。警部の知人、マネキン職人の大城の元を訪れていた。どうやら大城は、警部に相談したいことがある様子。詳しく事情を聴く。どうやら大城の学生時代の女性、了子が、夫である粟田から激しい暴力を受けているようだった。翌日、粟田のもとを訪れる燈馬達。すると了子は夕べ、家を出て行ったというが──。
Q.E.D.証明終了(16) (講談社コミックス月刊マガジン)
—以下ネタバレ感想—
犯人、トリックについても言及しています。
ぜひ実際読んでから、スクロールしてくださいね。
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サクラサクラ
オレは今までいろんなことをやってきたと思うんだ。学生、社会人、夫、父親、平社員、主任、課長。
いろんな名前がオレについて、いろんな形のものになってきた。でも退職を迎えて、全部過ぎ去って消えちまった感じがしてたんだが。なぜか今は後に残ったものがあるような気がするんだ。
名前も形もない物を見つけて……。それで少し幸せになったような……。
原版がなくなったのは、事故。
原版はテーブルの上に置いてあった。補充用紙の束を樺沢は、1度テーブルの上に置いてしまった。そこに原版が1枚、紛れ込んでしまったのだ。
コピー機内部の用紙の1番下を調べると、無事、原版は見つかりましたとさ。
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Q.E.D.にしては珍しく、お話が詩的な感じでしたね。恋愛話をここまで全面に出すのも、滅多にないことです。
事件に関しては、まぁそういうこともあるよね、といったところでしょうか。
私も中学時代の夏休みの宿題で、読書感想文かなんか書くための原稿用紙を紛失したことがありました。
たしか原稿用紙の近くに新聞があったなぁ、という記憶をたどり、新聞が束になっているところを調べたらマジで原稿が出てきたときはびっくりしたなぁ。
気分は名探偵な感じでした。
まぁ、それはともかく。
今回の見どころは何といっても、恋愛話ですよ。
この作品で恋愛をここまで扱うのはめずらしいかも。
水原に対して真っ向から、燈馬と付き合っているのかどうか問いただす社長令嬢、峰岸先輩。
その話題はクラスメイトの中では御法度。
どこから出てきたのか教室内のシェルターにみんな避難してしまいます(笑)。こういうマンガ的表現好き。
「つき合ってないし、燈馬君なんか関係ないよ!!」とイライラして叫ぶと、とうの本人がやってくるのもお約束。
(よかった! 聞いてなかったみたい)とドキドキする水原。
なんで聞かれなくて安堵してるんですかねぇ。
いやまぁ、燈馬は実際聞いていたんですけどね。水原に回答を丸投げしたうえでのあの無表情ですよ。燈馬、ちょっとずるい。
「それにはまだ名前がついてないから」と、峰岸に答える水原。これは原作者の一種の回答ということですかね。
ヘッドハンターから「なぜ日本の高校に入ったのか」問われた燈馬は、あの桜の花みたいなものですよ、と返答。いつになく詩人です。
「お花見は桜の花1つ1つ見ているわけじゃない。形のない全体があって、そしてその全部があるだけで楽しくなるような。アメリカにいたときは形ばかり見つけようとしてきた。今はそうじゃないものに触れていたい」
燈馬君も、なかなか詩人。
それを聞いてさっと席を立つヘッドハンターの人。この人もなかなかキャラがいいですね。
まるで最終回のような、綺麗なお話でした。
死者の涙
信じられない場面に出会う。
すると人は信じられない反応をする。私はそんな信じられないものを見た。
犯人は、粟田。
妻である了子の死体は、水槽と水槽の間に入れていた。そこは人間の目では死角となり発見できないのだ。
スキを見て粟田は、マネキン工場に死体を運び、大城に罪を着せたのだった。
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被害者に救いがなさすぎるお話。ここまで被害者がかわいそうなのはQ.E.D.では珍しいかも。
第1話とはまるで毛色が違いますね。
DVに苦しめられ、知人に手紙で助けを求めるも間に合わず。殺されたうえで死体を雑に扱われ、冤罪で被害者の知人が逮捕されてしまう始末。
そりゃ涙を流す奇跡を起こしてでも、燈馬に救いをこうというものですよ。
あの冷静沈着な燈馬がそれに答え、証拠のねつ造をやってのけます。
過去に、特殊な検出液で墨のニカワを青白く浮かび上げる、という嘘をついたことなどはありましたが、ここまでの証拠のねつ造は滅多になかったはず。
それほど死者の涙は、鮮烈だったのでしょう。
燈馬は水槽を斧でぶちやぶっていましたが、あれいくらくらいするんだろう……。
以上、Q.E.D.証明終了。
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