その町の上空には、巨大な鯨が泳いでいる。
少女と少年の、ノスタルジック青春ストーリーです。
タイトル | 海をみあげて |
著者 | 日比生典成 |
イラストレーター | 尾谷おさむ |
レーベル | 電撃文庫 |
初版発行 | 2007年7月25日 |
なんとなくジブリっぽい
高校受験をひかえた女子中学生、小日向真琴(こひなたまこと)が主人公です。
真琴が住んでいる町は10年前、直下型地震の震源地となり壊滅的なダメージを受けました。多くの方が亡くなり、家屋のほとんどが倒壊してしまったそうです。
そんな時、とつじょ上空に巨大な鯨が出現します。
地震と鯨の因果関係は、今もってわかっていません。
鯨は目で確認できるだけで、実際にそこにいるわけではない。ビルすれすれを通っても何も起きないし、飛行機とも激突しない。
でも鯨が潮を吹くと、その潮水は町全体に降りかかり、洗濯物や建物を濡らしてしまうのです。震災のときは、この潮吹きのおかげで、延焼しかけた町全体が救われました。
そんな不思議な街が舞台のお話です。
珍しい世界観だな。
鯨とは
10年前、何の前触れもなく主人公の住む町の上空に出ました。単独ではなく、群れで現れることもあります。
主人公は鯨のことが大好きなのですが、町の人たちの中には鯨をうとましく思っている人もいます。洗濯ものはぬれるし、建物には塩がこびりつくため仕方ないことかもしれません。
鯨の影響かどうかは学者にもわかっていないのですが、この町では写真はとれなくなり、携帯電話も作動しなくなってしまいました。
鯨を見るには、この町に直接おもむかなくてはなりません。観光収入により市の財政はうるおい、町は復興を果たしました。
大きな事件は起きないけれど……
舞台設定をのぞけば、オーソドックスな青春ストーリーものといえるでしょう。
作中、主人公の身に危険がおよぶような大きな事件とかは起きません。比較的たんたんと物語は進んでいきます。
内容は、「鯨とモーツァルト」「幼女とおじいさんと花火の話」「気球で太平洋横断」などなど。
ストーリーはよくいえば読みやすく、悪くいうとしゅくしゅくと進んでいきます。
また、青春ものとして当然あるべき恋愛要素もあります。
ジブリ作品であえていうなら「耳をすませば」に近い印象を受けるかもしれません。全体的にノスタルジックな雰囲気がただよっています。
読後感も悪くなく、すっきりと終わります。
さわやかな青春ものが好きな方は、1度読んでみてはいかがでしょうか。
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