【六部の宝】六部の宝をめぐり、山あいの村に巻き起こる惨劇。 & 【ロスト・ロワイヤル】ブガッティ・ロワイヤル、幻の7台目を追え!
タイトル | Q.E.D.証明終了(2) |
著者 | 加藤元浩 |
レーベル | 講談社コミックス |
初版発行 | 1999年1月14日 |
あらすじ
六部の宝
死番虫とともに送られてきた古文書
燈馬の元に届けられた小包。中には古ぼけて虫に食われた古文書、そして虫の標本が入っていた。古文書の解読を依頼された燈馬だが断ろうとする。しかし古文書解読のために向かう場所が温泉町と知った水原の一声により、燈馬は依頼を受けることに。六部伝説の残る地。そこでいきなり起こる殺人事件。はたして犯人の目的はなんなのか? 六部の呪いは本当にあるのか?
ロスト・ロワイヤル
幻の車はいずこへ
ブガッティ・ロワイヤルという、伝説級の車があった。その伝説の車には、ある噂が付きまとう。幻の7台目があるのでは、と。水原の後輩、由美子のおじいちゃんが、その7台目を見つけたという。しかしおじいちゃんの様子がおかしい。なんと、親友の男に車を騙し取られてしまったというのだ。燈馬たちは協力して、ブガッティ・ロワイヤルの奪還に動き出すが──。
Q.E.D.証明終了(2) (講談社コミックス月刊マガジン)
—以下ネタバレ感想—
犯人、トリックについても言及しています。
ぜひ実際読んでから、スクロールしてくださいね。
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六部の宝
この街灯もない暗闇の世界……。その時夜空に輝いてくれる美しい月が……。オレを照らしてくれるかけがえのない希望だってことが……。
財宝なんて関係ない……。ただ、それだけだったのに……。
犯人は駐在。
自分のあこがれの人、静奈が海外で活躍するのを楽しみにしていたのに、両親が早く死んだため、代を継ぐためにこんな古びた村に戻ってきてしまった。
駐在は、それがどうしても許せなかった。
静奈さんが海外で活躍することを、駐在さんは本当に望んでいたんだろうね。
だからこの村は呪われた村なんだと怖がらせ、静奈を外に追い出そうとした。
駐在は、人を殺すつもりなんてなかった。変装して、ただ脅かすだけのつもりだったのに、予想外の反撃にあい、拳銃で射殺してしまったのだ。正体が見破られたため、もう1人も殺害。
結果的に、2人も殺してしまう大惨事になってしまったのだった──。
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六部伝説とは、なんとも恐ろしいお話です。
アスピリンによる血液凝固を遅らせたアリバイトリックや、犯人を指摘する際の靴跡など、面白いところがいっぱいありますが、個人的には最初の村人の発言が好きです。
推理マンガやドラマでは、犯人の矛盾発言によって犯行がバレるという展開がよくあります。
この話もそれがあるのですが、そのセリフをモブ村人に言わせるのがうまいなぁ、と思いました。しかも序盤も序盤に。
具体的にいうと、『六部伝説を知らない人から通報を受けかけつけたのに、その道中すれ違った村人に、六部の恰好をした奴に襲われたと通報を受けた、と話したこと』ですね。
事情聴取もしてないのに、六部なんて言葉がでてくるわけがありませんね。
あと仏像の恰好。
普通仏像の恰好と言われれば、座った状態のものを想像する人が多いのではないでしょうか。
奈良の大仏みたいなやつだね。
しかし静奈さんが探していたのは、立像。
もし静奈さんが1人目を殺した犯人であるならば、その見立ては死体を立てなければならないことになる。
しかし実際は死体は座った仏の恰好をしていた。
よって静奈さんは犯人から除外された、という話でした。
死番虫、気持ち悪い。
それにしても、なんとも切ないお話じゃないですか。
自分のあこがれた、というか恋焦がれた人が、こんなサビれた村にとどまる何て絶対におかしい。
そんな純粋な気持ちで起こした事件が、こんな血なまぐさい殺人になってしまうなんて。
しかも最後には、六部の謎が解明され、結局静奈さんは村に居続ける決意を固めます。
駐在さん、合掌。
ロスト・ロワイヤル
無論、今の話にウソはない……。七台目のロワイヤルなんてただの伝説さ……。ない物は持ってない!
犯人は親友の男(まぁ、当然ですが……)。
隠し場所は、親友が経営するデパートの東京本店。その駐車場。
75台が収容できる駐車場があるのですが、作中ではとある仕掛けがしてあります。
1フロア15台が入れて、それが6階分あるはずなのです。
15×6。つまり90台収容可能なはず。
ハリは、九×九までしかできない……。
しかし75台しか収容できないとはどういうことなのか。
フロアの最上階分は、秘密の隠し部屋のような扱いを受けていると、燈馬は看破していました。
こんな簡単な計算、読めば誰にでもわかりますよね(私は見逃しましたが……)。
しかし水原と由美子が、ざっと最上階を探し回っても、ブガッティ・ロワイヤルは発見できません。
それもそのはず。とあるトリックが仕掛けられているからです。
ロワイヤルは、普通の車の2台分の大きさを有しています。普通に駐車したのでは、1台だけはみ出してすぐ発見されてしまう。
そこで親友は、駐車場の壁をくりぬいて、胴体部を壁に貫通するように置いていたのでした。
遠くから見ただけでは、車両の頭とおしりしか見えないため、まるで2台の車が停まっているように錯覚してしまいます。
まぁ、近づけばバレるんですけどね(笑)。
こうして親友の犯行を見抜いた燈馬たちは、無事、ロワイヤルを取り戻したのでした。
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それにしても由美子のおじいちゃんは、人がいいというかなんというか。
盗まれた時も、かつて親友だった男だから、という理由で警察に通報せず、最終的にロワイヤルが発見されたあとも、表ざたにしませんでした。
それどころか、おじいちゃんと博物館の使者が握手している新聞記事にちゃっかり親友が写り込んでいます。おじいちゃんは親友を許したのでしょう。
あまりにも人が良すぎますが……。
そんな情に熱い人だからこそ、執念で7台目のロワイヤルを見つけられたのかもしれませんね。
おじいちゃん、すごいね!
親友の会社に潜入する際の、水原と由美子の茶番がいいですね。
ドキドキしている由美子がかわいらしいです。
また、2人が親友の家のガレージに忍びこむとき、ガラスに円形のヒビを入れ、さぁあとはキズをいれたところをたたくだけ。
そんな緊迫したシーンで、水原が思いっきりガラスをぶち破ったところは、不覚にも笑いに声が混じってしまいました。
というか、この2人、ナチュラルに犯罪しすぎではなかろうか。
そんなこんなで車も見つかり大団円──。
とはいかず。
水原と由美子の行動を黙って見守っていた燈馬。
それは親友を不安にさせるための、おとり捜査的な役割を担っていました。
黙ってそんな役をやらされていたことに気が付いた水原によって、燈馬は剣道着を着せられます。
ここで物語は終わってしまいます。
師範から1本取ることすらある水原の実力ですから、この後は、きっと愉快な稽古になったことでしょうね。
以上、Q.E.D.証明終了。
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