バカミス、ここに極まる。
タイトル | 天地驚愕のミステリー |
著者 | 鳥飼否宇 北原尚彦 船越百恵 山口雅也 |
編者 | 小山正 |
初版発行 | 2009年8月20日 |
タイトル | 奇想天外のミステリー |
著者 | 辻眞先 鯨統一郎 かくたかひろ 戸梶圭太 霞流一 |
編者 | 小山正 |
初版発行 | 2009年8月20日 |
こんなミステリーってあり!?
バカミスという言葉をご存知でしょうか?
知らない人の方が多いかもしれませんね。
「面白くないミステリー」のこと、ではありません。
ミステリーに限らず、そういった「つまらない」本は、総じて壁本と呼ばれます。
読み終わったあと壁に投げつけたくなる本。なるほど、とてもわかりやすいですね(笑)。
私は気に入らない本は、呪術にかけちゃうけど……。ふふっ、冗談よ。
さて、それではバカミスとはなんなのか。
正確な定義はありません。
読み手側が「あきらかに本格ミステリーとはいえないけど、この推理本、面白いかも」と思った瞬間、その本はバカミスたりえるのです。
バカミスと壁本は紙一重
バカミスというのは、ミステリーを揶揄する単語ではありません。むしろその本を称賛し、ほめたたえるときに使います。
あまりにも現実離れしたトリックや奇々怪々な登場人物を楽しめるなら、それはバカミスかもしれません。
具体的にどんなものがバカミスといえるのか。
たとえば本作では、こんな短編が入っています。
殺された被害者は、『どのミステリがすげぇ?』──通称『どのミス』にのるコラムを書いていました。
コラム内容はお下劣な殺人について書かれたものであり、面白いかはさておいて特に異常は見当たらない。
そんなこんなで犯人が逮捕される。犯人は編集の人間だった。
あんたのやったことが理解できない、と警察に言われた犯人は、被害者のコラムについてこう述べます。
「こんなコラムは、大半の読者はちゃんと読まない。ななめ読みするはず。被害者はそれすら予想していたんだろう。ですから、コラムを斜めに読んでみてください。あの男の浅はかな企みに気づくはず。どのミスの誌面を、こんな風に利用されたのが屈辱だったから殺した」
と口にします。
意味がわかるでしょうか?
コラムは全文掲載されていて、普通に読めば殺人ものなのですが、ななめ読みすると別な文章が浮かび上がるという高度な技術が使われているのです。
「おお、面白そう」という感想を持った人と、「つまんねぇ、それトリックと関係ないじゃん」と思った人がいるかもしれません。
前者にとってはバカミス、後者にとっては壁本になったかもしれませんね。
このように1つの話をとっても、人によってバカミスかそうでないかの意見は食い違うのです。
私は殺人ミステリーならなんでも好きよ。
もちろん、この作品のような文全体に技巧をこらしたものだけをバカミスというわけではありません。
それこそバカミスの可能性は無限大、制限のまったくない自由な推理ものを書くことができるのです。
本作の特徴
2冊ありますが、両方ともバカミスの短編集です。
コアなバカミスファンはもちろん、バカミスに少しだけ興味がある方でも楽しめる内容になっているかもしれません(壁本になる可能性も、もちろんありますが……)。
ぜひ1度、目をとおしてみてはいかがでしょうか。
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